広告資料館 2014年4月

ダニエル東京

今月も質量共に豊富な折り込み広告が毎朝届きました。
今月取り上げさせていただいた折り込み広告は、ダニエル家具です。ビジュアルはとても高級感あふれる老舗家具店を想起させます。一言で高級感と言いますが、高級な物を高級に伝えるデザインテクニックはとても難しい部類です。輸入車や都内のマンションの広告に見ることが出来ますが、購入後に手元にするパンフレット類と違い、折り込み広告では、購買意欲の増進が重要ですから、「高級そうだから敬遠しまよう。」と言う方向にならないよう気を付ける必要があります。また、ここで重要なのは「高級」では無く「高級感」なのです。高級に感じるデザインとは、どの様な要素を含むのか整理して考える必要があります。
今月取り上げた折り込み広告は間違い無く高級感の有る広告だと言って良いかと思います。一番最初に感じるのはトーンです。全体を支配するのはダークトーンで、「落ち着いた」「伝統的」等のイメージを想起させます。図は同じ色相に墨(黒)を混色して得ることができるトーン変化を表しています。同じシアン系の色に80%程度黒を混ぜるだけで高級なトーンが出来上がります。しかし、トーンを揃えただけでは色に情報が埋没してしまし、伝えるべき内容が伝わらなくなってしまいます。そこでレイアウトの工夫が必要になります。今回の広告は垂直軸を中心に左右対称のシンメトリーの構図を用いています。シンメトリーは、対称性一般のことで、デザインでは左右対称を主にシンメトリーとして解釈しています。2012年12月伊勢丹「大歳の市」でシンメトリーに触れていますが、左右対称の構図はデザイン的に安定していますので色々な場面に多用されます。しかし、動きが無く、使い方を間違えると「ただそれだけ」のモノになってしまいます。
ここで上手く使われているのが「光」です。まとまり過ぎた構図に対して、右上からイスの座面に照らした光が床に落ち、見事にバランスを崩し、視線を動かす事に成功して、空間の把握を与えています。それが一番高級に感じる要因でしょう。